「スエードは雨に弱い」「濡れるとシミになる」「デリケートだから雨の日には履けない」。
そんな言葉を、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
しかし、私たちM.MOWBRAY(株式会社アールアンドデー)は、創業以来この常識に疑問を持ち、
「スエードは水に強く、むしろタフで扱いやすい素材である」と伝え続けてきました。
当初は懐疑の声も多く、「本当に?」と半信半疑の方も少なくありませんでした。
けれど、講習会や実演で実際に見ていただくと、その反応は驚きに変わります。
「本当に弾く」「シミにならない」「お手入れってこんなに簡単なんだ」と。
それが、私たちがずっと伝えてきた“誤解”と“真実”の物語です。
スエード・ヌバックとは!? “起毛の美学”

スエードやヌバックは、革の表面/裏面を細かく起毛させた「起毛皮革(ナプ革)」です。
毛足による柔らかな陰影は、手触りだけでなく、履く人の個性を映し出す独特の表情を生みます。
スエード:裏面を起毛させ、マットで温かみのある質感。

ヌバック:表面(銀面)を起毛させ、上品でベルベットのような雰囲気のある仕上がり。

一見デリケートに見えますが、実はこの「毛」がスエードを“雨に強い素材”にしているのです。
なぜスエードは雨に強いのか?──自然が教える撥水の原理
雨の日、森の中を歩いてみると、意外と地面まで雨が落ちてこないことに気づきます。
木々の枝や葉が何層にも重なり合い、雨粒を分散し、地面に届く前に吸収してしまうからです。
スエードの毛足も同じように、無数の「小さな木の枝」が立ち並ぶような構造をしています。
雨粒は革の地肌まで届かず、毛の先端で一度とどまり、球状になって弾かれる。
つまり、スエードとは「小さな森」そのものなのです。
さらに、毛と毛の間にある微細な空気層が、湿気や水分をクッションのように跳ね返します。
毛羽立ったセーターやカモの羽毛が水を弾くのと同じ原理。
スエードは自然が生み出した“呼吸する防水素材”なのです。
ただし、森も乾けば枯れる。潤いのケアが命
どんな森も、水分を失えば乾いて枯れてしまうように、
スエードも乾燥すれば毛が硬化し、密度が崩れ、撥水力が落ちます。
つまり「防水の前に、まず保湿」これがスエードケア最大のポイントです。
スエードケアのエッセンス:お手入れは「簡単・短時間・定期的」
スエードは決して手のかかる素材ではありません。基本の4ステップで、誰でも美しく保つことができます。
① ブラッシングで汚れを落とす

起毛皮革専用ブラシ(例:ツイストワイヤーブラシ)でホコリを払い、毛並みを整えます。
これだけでも表情がよみがえります。
② M.MOWBRAY スエードクリーナーでリセット

表面の汚れや油分を軽く落とし、“すっぴん”の状態をつくります。
スムースレザーに水性クリーナー(ステインリムーバー)を使うのと同じ考え方です。
③ 色あせが気になるときは補色ケア

FAMACO スエードカラーダイムリキッドを使い、色味を補給。
一度作業した後でさらに濃くしたい場合は、
2度、3度と、重ね塗りをすることでお好みの濃さに調節いただくことが可能です。
④ 栄養&防水スプレーで保護する

M.MOWBRAY スエードカラーフレッシュを約30cm離して全体にスプレー。
完全乾燥後、軽くブラッシングすることで皮革に潤いを与えながら、
撥水・防汚効果を最大限に発揮します。
雨の日こそスエードを
スエードやヌバックは、天候を選ばない“オールウェザー素材”。
雨の日も安心して履けるうえ、乾けばまた元どおり。
スエード素材を使用した靴で、さらにソールがゴム底で雨にも滑りにくいものであれば、
雨天の行動や気持ちがとても楽になります。
「履く楽しみ」と「手入れの楽しみ」が共存する。それが、スエードという素材の本当の魅力です。
おわりに:誤解を解き、文化を育てる。
スエードカラーフレッシュは、単なるスプレーではありません。
それは“潤いを与える栄養剤”であり、“自然の防水力を引き出すキーアイテム”です。
そして、私たちが本当に伝えたいのは、
「モノ」ではなく「知識」と「信頼」。
M.MOWBRAYはこれからも、実演と対話を通じて、“スエードは弱い”という誤解を解き、
革を愛する人が増える文化を育てていきます。

