購入した当初は、色味のインパクトが強く印象的だった靴が、久々に見てみるとその強いインパクトがどうも薄れた感じがする・・・なんて経験ありませんか?
気のせいかどうか、実際に確認してみましょう。
革靴の色は自然に変化する?
こちら下記画像は、購入から約1か月後に撮影したものです。
そして、次の画像が現在の様子です。
2枚目の画像の方が、1枚目に比べて色が薄くなっています。この色の違いは、時間の経過とともに、革の色が褪せていったことで生まれたものです。革によって、色が褪せる(変化する)度合に違いはありますが、光や雨に当たるといった影響で、革の色は基本的に薄くなっていきます。この靴の場合、色が薄くなった現在の状態も決して悪くありません。変化した後の色を生かして、磨いてあげるのも一つの手です。しかし、今回は少し手を加えて、最初のインパクトがある色味に近づけてみたいと思います。
アンティーク仕上げとは?
元の色味に近づける作業を始める前に、購入から1か月後の靴の画像をもういちど確認してみます。
よく見ると、全体が均一な茶色ではなく、部分的に色が濃くなっていることがわかります。このような革靴の磨き方は、アンティーク仕上げと呼ばれています。アンティーク仕上げは、色の濃淡をつけて、靴をより立体的に見せることができる特徴があります。この靴に感じていたインパクトの正体は、実はここにありました。
アンティーク仕上げのポイントは〇〇選びにあり!
アンティーク仕上げのポイントとなるのは、クリームの色の選び方です。靴本体の色に対して、どのくらい濃い色を選ぶか?ここさえ間違えなければ、誰でも簡単にアンティーク仕上げができます。では、今回はどんな色のクリームを使えば良いかを考えていきます。
現在は全体の色が褪せてしまっていますが、この靴の色が淡い部分(シワが入っている周辺)は、ダークブラウンでした。それに対して、つま先周辺の濃い部分はブラックに近いくらいグッと沈んだ色でした。そこで、今回は濃い部分には、ブラックやネイビーを使ってみようと考えました。「茶色の靴に、ブラックやネイビーのクリームを使って大丈夫?」と思われるかもしれませんが、ご安心ください。塗る量、塗り方さえ間違えなければ、確実に綺麗に仕上げることができます。
弊社で取り扱っているENGLISH GUILD ビーズリッチクリームは、色を着ける力、光沢を出す力に優れているため、アンティーク仕上げとの相性は抜群です。クリームの種類は決まりましたので、最後に色を決めます。つま先の色を一気に濃くするにはブラックが最適です。しかし、ブラックだと淡い部分との境目が強く出てしまいます。濃淡の境目を自然に仕上げるためには、ネイビーが優れています。ブラックほど色が強くないネイビーは、淡い部分と自然に馴染んでくれるのです。今回は濃淡のグラデーションを綺麗に見せることを優先して、ネイビーに決めました。
自然な濃淡をつけるには?
それでは、実際に靴を磨いていきます。まずは、靴全体をダークブラウンかニュートラル(無色)のクリームで磨きます。具体的な流れは、
こちらをご覧ください。
ここからがアンティーク仕上げの工程です。まずはネイビーのビーズリッチクリームを、ペネトレィトブラシ(クリーム塗布専用ブラシ)に取ります。色を濃く仕上げたい、つま先部分に塗る適量は米粒1粒分です。
クリームを塗るとき、色を最も濃くしたい先端周辺は、グリグリとペネトレィトブラシを押し付けてクリームを革に押し込みます。一方、淡い部分との境目はネイビーのクリームが染み込み過ぎないよう、表面を滑らせるようにペネトレィトブラシを動かすと良いです。次に、ツヤ出し用の豚毛ブラシに持ち替えます。つま先周辺は円を描くように。淡い部分との境目は、つま先から踵の方向に向けてブラシを動かしてください。ネイビーのクリームが濃い部分から薄い部分へと、良いバランスで馴染んでくれます。
向かって左は、通常の磨きのみで仕上げた状態です。向かって右は、アンティーク仕上げまで施しています。
濃淡がしっかりつくことで、これだけ見た目の印象に差が出ます。
ちなみに、アンティーク仕上げは、今回のように元々濃淡がついていた靴だけのものではありません。均一な色味の靴に、アンティーク仕上げを施してあげる方法もあります。履きなれた靴の新しい表情が発見できるかもしれませんので、ご興味のある方は、ぜひチャレンジしてみてください。